アーバンライフ。
すてきな響き。
アーバンライフシリーズは1987年に登場して、1994年まで新商品が発売された。
とはいえ、そのうち最初の2年間でシリーズ内の大半が発売されたので、あまり息の長いシリーズとはいえない。
イコール、さほど人気は無かったと考えるのが普通なのだけど、私はどうしてもアーバンライフシリーズが気になってしまう。
アーバンライフシリーズの存在はめちゃくちゃ大きいと思うのだ。
という、沼にはまりかけている新参者オタクの考察記事です。
アーバンライフシリーズってどんなシリーズだったのか、アーバンライフシリーズのあと村はどんな風に変わったのか、ひたすら考察してます。
当時のお話はくわしい方にインタビューできました。ここだけでも必見です。
おもな情報源は、図録こと『シルバニアファミリー展 大図鑑』。
Contents
アーバンライフシリーズって何?
アーバン(都会的な)という名前のとおり、コンセプトは街。
この街はシルバニア村から離れたところにあって、住んでいるファミリーも村の住人たちとはちがった。
当時とても素朴だった村とは対照的に、建物も家具もデザインが洗練されていた。
シリーズの期間は短かったものの、シリーズ内だけでじゅうぶん街の暮らしを楽しめるくらい充実している。
ファミリー4種類に、お家が3つ、お店も建物とワゴンが1つずつ。
そして家具や自動車、街頭、テレフォンボックスまで。
そのどれもが村とは全然雰囲気のちがうデザインだった。
まずは建物を見てほしい。
左から、アーバンハウス(1987年)、アーバンハウス(S)(1988年)。
そして右の見切れているお店が、すてきなカフェテラス(1988年)。
西洋風でどっしりとしゃれている。
この黄色い建物はアーバンヒルズハウス(1991年)。大人でも頑張れば入れそうなほど大きい。
ここで当時の村のお家を見てみると、
まったく雰囲気が違う。
村は素材をそのまま生かしたような雰囲気で、とても素朴だ。もちろん村のデザインがダサいなんてことはない。朗らかで素朴で優しげで、できれば住みたい。
ただ、すごく、違うのだ。
街と村の違いがすごく大きいのだ。
この違いの大きさは、建物だけにとどまらない。
村で当時メインだったのは緑色のシンプルな家具。
それに対し街でメインとなったのは、茶色ベースで細部まで手の込んだ、立体感のある家具。
街には、そもそも村に存在していなかった物も存在していた。
たとえば電話やテレビ。
そして、
自動車だ。なんておしゃれ。
ファミリーも村とは違う。
街に住んでいたファミリーは、イヌ、ネコ、ヤギ、アヒル。
どれも昔から人間に飼われていたタイプの動物だ。
当時シルバニア村に住んでいたクマやタヌキなどに比べると、人間にとってとても身近な動物たちである。街のファミリーは、村のファミリーより高そうな服を、きっちりと着こんでいる。
人間と近い。
これはファミリーだけでなく、アーバンライフシリーズの全体に言えると思う。
設定やデザインを見ると、シルバニア村より異世界感が薄く、人間と近い感じがする。
……と綺麗にまとまったところで。
いまのシルバニア村には自動車もあるし電話もテレビもあるし、イヌやネコのファミリーもいる。
そう、昔はアーバンライフシリーズにしか無かったものが、今は村にあるのだ。そのデザインを見てみると、アーバンライフシリーズとすこし似ている物も多い。
これこそ、私が「アーバンライフシリーズの存在めちゃくちゃ大きいな」と思う理由である。
でもそれはシリーズ終了後の話なので、くわしくはまた後ほど。
1987年のリアル
シリーズ終了後の話をするまえに、当時のリアルな話を知りたい。
アーバンライフシリーズが発売されていたのは、1987年から1994年だ。
もう30年前の話である。
私はシルバニアの歴史記事をいくつか書いているけれど、結局のところそれは、いま私が『シルバニアファミリー展 大図鑑』をぺらぺらと読んだ感想にすぎない。
当時、アーバンライフシリーズはどんな存在だったのか。
知りたい。
というわけでツイッターの投票機能をつかい「当時を知っている人がいたら発売当時の空気感を教えてください」と聞いてみた。
投票してくださった83名のみなさん、本当にありがとうございました。
「閲覧用(結果を見たい)」という同士がいちばん多い。当時の状況を知っている人はツイッターの中でも少数派らしい。
そして当時を知っている人の中でも人気の感じ方はそれぞれだった。「さほど人気はなかった」が思ったより多くてびっくり。
全体的に見ると「そこそこ人気はあったけど、ずば抜けて大旋風を巻き起こしたかというとそれほどではなかった」という感じだろうか。
ここで私に朗報。
当時を知っている方が、最初に公告を見たときの感想や、じっさいに目にした当時の売り場について、くわしく教えてくれたのだ。
ツイッターにてお話を聞けたのは、小町さん(@komachi20191022)。
彼女のリアル
小町さんは、発売当時からアーバンライフシリーズを集めていたんだとか。
当時はおじい様にクリームネコ一家を買ってもらい、時間が経って大人になってから初任給でグレーネコ一家を購入したという愛の深さ。
アーバンライフシリーズのファミリーは高価でなかなか手が出なかったものの、それからさらに時間が経ち。
数年前から地道に探して今ではもうほとんど集めたそうだ。
すごい。
そんなガチ勢からお話を聞けるとは思わなかった。
①アーバンライフシリーズを初めて知ったとき
小町さんがアーバンライフシリーズに出会ったのは小学館の学年誌。
「オシャレすぎるー!うわー、どうやってねだろう…」と数時間悩んだのが始まりだ。
服は貴族でオシャレ、お父さんが農夫じゃなくて蝶ネクタイしてる。そしてイヌネコ登場。盆と正月が一度に来たようなお祭り騒ぎだったらしい。
その翌日、クラスではアーバンアイフシリーズのことで盛り上がり、そして学校が終わると玩具売り場でチラシを漁ったそうだ。
②当時の広告
まずは小学館の学年誌。
当時いちばん広まる媒体だったという学年誌に、アーバンライフシリーズの広告が載っていたらしい。
さらに。
TVアニメの前半後半にもかならずCMが入っていて、子どもなら絶対ほしくなる、絶対好きになるプロモーションだったそうだ。
「お陰で35年目になってもシルバニア沼で生きてます(笑)」と小町さんは話してくれた。
35年間同じものを好きでいられる一途さも、そんなに好きなものに出会えたこともすごい。
③当時の売り場
当時の売り場がどんなだったか、什器のイラストまで描いていただいてしまった。本当にありがとうございます。
描いていただいたのは丸栄の什器。
ジオラマを覗くと、一時間見ていても飽きないヨーロピアンな花の都が広がっていたんだとか。
そしてジオラマの下には木製の引出しが3段。
引出しはそれぞれ水色のふちどりがあって、イエローゴールドで植物の模様も手描きされていた。とってはいぶしゴールドで丸っこいフォームの金属。
引出しの隙間からはシルバニアの箱がチラチラ……。
……という豪華な什器がおどろきの3スパン。
売り場がでっかい。
丸栄と松坂屋には、さらに初期シルバニア(村)のジオラマもあり、ワクワクする売り場だったそうだ。
あまりに夢がつまっているせいで、欲しすぎて号泣する子どもたちを親御さんが引きずって歩くという地獄絵図だったらしい。
④【写真】アーバンシリーズのファミリーたち
たくさん写真をいただいた。本当にありがたいです……。
全18枚、UK版もふくまれてます。洋服が違う子もいるそうですが、じっさいのお人形の雰囲気が分かりすぎるほど分かる写真たちなのでぜひ見てください。
みんな楽しそう。
しかも背景にはアーバン以外の初期の家具がどっさりだし村の初期ファミリーもいるしで、さらに度肝を抜かれた。
小町さんのリアルなお話を聞くことで、それまでぼんやりしていた「アーバンライフシリーズ」像が、少しくっきりした。
この街が、村を変えた。
さて、アーバンライフシリーズについて、当時のことを探ったうえで。
アーバンライフシリーズが終わったあと、村はどんな風に変わったのか。
家具とお家とファミリーに分けて、それぞれ見てみよう。
家具
まずは家具。
テレビや電話など、むかしはアーバンライフシリーズにしか無かったものが村に加わっている。
それだけじゃない。
図録の、アーバンライフシリーズ(家具)のページには「この洗練されたデザイン性は、やがて村の家具にも受け継がれるようになりました」と書かれていた。
シリーズ終了後の村の家具をみると、アーバンライフシリーズによく似たデザインの家具がたくさん発売されている。
このへんとか。
このへんとか。
もはやアーバンライフシリーズとして売り出しても違和感がなさそうだ。
では最近の家具はどうかというと、またすこし様子がちがう。
アーバンライフシリーズを彷彿とさせる雰囲気の家具は少なくなった。もちろん洗練されたデザインは受け継いでいるし、さらにこまかいレリーフまで加わっている。
なぜアーバンライフシリーズの雰囲気と違うのかといえば、明るい色合いの、柔らかい印象の家具たちが多いからだろう。
アーバンライフシリーズに頼り続けることはなく、洗練されたデザイン性を受け継ぎつつもそこに柔らかさをプラスして、シルバニア村の家具は進化している。
お家
建物もアーバンライフシリーズ以降変わった。
このお家を見て「アーバンライフシリーズに似てる」と思った。
ドアの色と壁の色が違うこと、しかくいフォルム、しゃれたデザイン。綺麗に塗られた人工的な壁、こまかい部分の精密なレリーフ。
しかも住んでいるのはチワワファミリーだからイヌの家族(イヌはもともと街にしかいなかったファミリー)。
さらにチワワさんたちは自動車に乗って引越してきたというエピソードつき(自動車はもともと街にしかない)。
チワワさん一家、もしかしてアーバンから来たんじゃないかと思ってしまう。
私は当時を知らないくせに「アーバンライフシリーズは古きよき伝説。いまはなき英雄」と神格化していた節があるのだけども。
「今はない」というのはすこし言い方が違うかもしれない。
むかし「鳥のご先祖さまは恐竜なんですよ」と聞いたときに、やたらロマンを感じたことを思い出した。私は恐竜が好きなので「まじかよ恐竜生きてるじゃん」と嬉しくなったのだ。
お家のくわしい歴史はこの記事にまとめた。
お家のデザインは、アーバンライフシリーズを飲み込み、さらに精密でもうすこし柔らかい雰囲気になっていく流れが見える。
家具と同じく、柔らかさがプラスされている。
ファミリー
アーバンライフシリーズ終了後、イヌネコのファミリーは村で続々と登場し、いまや定番ファミリーのひとつとなっている。
村での初登場は1994年。イヌファミリー(オークルタイプ)が街での装いとそっくりの出で立ちで登場する。
しかし、ずっと街らしい服装がつづくわけではない。
2年後の1996年に発売されたネコファミリー(ミケタイプ)はお母さんがエプロンをつけていたり、子どもたちが軽装だったりと、すっかり村の装いになっている。
ぎゃくに2011年以降になると、アーバンライフシリーズを彷彿とさせる装いも復活した。この時期は村のなかでもファミリーごとに服のちがいが大きいから、街の装いでもさほど目立たない。
ちなみにファミリーの種類数をかぞえてみたら、イヌネコのファミリーはそれぞれ、ウサギ(歴代全6種類)の2倍以上だった。
それだけでも人気がうかがえる。
さらに、2019年の18家族集合写真(ひな壇にファミリーたちが並んでいる)を見てみると、まんなかのショコラウサギファミリーをぐるっと上下左右で囲んでいるのはすべて、イヌネコのファミリーたち。
イヌネコのファミリーはもはや、主役の両脇をがっちり支える、シルバニア村になくてはならない存在なのだ。
まとめ
アーバンライフシリーズが無くても、シルバニア村はすこしずつ変化し、進化していったんだと思う。
それでもこの街の存在は大きかった。この街がシルバニア村を素朴から洗練へと、一歩進めたのは確かだろう。
そしてアーバンライフシリーズの匂いみたいなものが、いまも村の中で生きているのもまた、確かじゃないだろうか。
というわけで、今回の記事もお読みいただきありがとうございました。
私のしつこい質問攻撃に親切に協力してくださった小町さん(@komachi20191022)、そして投票に参加してくださった83名のみなさん、本当にありがとうございました。
インタビュー部分はまだまだ書ききれなかったことがあるので、機会があればほかの記事でご紹介いたします。機会がなければ私の胸のなかの什器にだいじにしまいます。
新参者ですので、シルバニアファンの方から見て「ここ違うよ」という部分があればぜひお気軽にコメント欄やツイッター(@satouao)にて教えていただけると嬉しいです。
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